はじめに
三宅香帆さん著「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読ませていただきました。
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」:Amazonリンク
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」というタイトルを見て、働きながら隙間時間を作るにはどうするか、を書いている本かなと思っていました。
ですが、単なるハウツー本ではなく、この本の内容の8割は、「読書の歴史」について記載されています。明治からの読書の歴史を振り返り、各時代の時代背景と読書はどのような位置づけだったか、誰を対象として売られていたかを説明してくれています。
過去の時代背景を理解した上で、現代に照らし合わせてみると、なぜ最近の人の読書量が低下しているのかが見えてきます。
自分のキャリア・将来について不安、情報強者でないといけないという焦りを現代人が感じている。その結果、本などの余暇に費やす体力・気力がなくなっていることを、この本を読むことで気づくことができます。
読書についての理解を深め、自身の状況を振り返りとしてこの本が有用だと思いましたので、評価・感想をまとめました。
本のあらすじ
本の前半部は1950~1990年代までの読書の歴史について記載されています。例えば、昔は読書はエリートが学ぶ教養として位置づけられていましたが、時代の変化によって、サラリーマン、大衆、女性へと読書のターゲット層が移り変わっています。
後半部では現代について記載されていて、なぜ読書は現代人に仕事のノイズとして扱われていると説明しています。
最終部として、現在の日本の社会の在り方に筆者が疑問を呈しており、余暇に読書・自分の好きな趣味を楽しめるようなゆとりある世の中にしていくにはどうするかという内容で締めくくられています。
評価一覧
総合評価 | ★★★☆☆ |
値段 | ★★★★☆ |
所要時間 | ★★★★☆ |
読みやすさ | ★★★★☆ |
興味深さ | ★★★★☆ |
内容充実度 | ★★★☆☆ |
評価詳細
総合評価
総合評価は★3.5です。
なぜ読書ができないのか、というタイトルに対して、内容は本の歴史がメインとなっていますので、タイトルから想像される内容とは若干乖離がある内容になっています。
最終的になぜ現代人は読書ができないのか、という理由を記載してくれているのですが、個人で対策するのはなかなか難しく、では自分はどうしようかと悩みにぶつかっています。
ですが内容自体は面白く、読書に関しての歴史という、あまり見たことがない内容と、現代人の疲労の原因について解説していますので、興味深く読ませてもらいました。
値段
1000円+税。
所要時間
所要時間は3時間。
260ページ程度なので、比較的時間はかからないかなと思います。
読みやすさ
読みやすさは★4です。
1章あたり20ページなので、隙間時間に読むということに適していると感じました。
各時代の有名な作家の引用が多数ありますが、作家を知らなくても困らない内容になっています。
興味深さ
興味深さは★4です。
読書の歴史についてはそれはそれで面白いですが、現代人にとって読書とは何か。という後半の内容が特に面白いです。
私自身、社会人になってめっきり小説を読まなくなってしまったのですが、まさに自分が感じていた焦りについて言及されていて、はっとなりました。
仕事での自己実現、会社倒産に備えたスキルアップ、老後の保証がないので自分での資産運用、など、現代人は役に立つ情報が何よりも重要になっていて、何に使えるかもわからない読書・趣味を楽しむ余裕がなくなっています。
社会の流れ自体は変わらないですが、私自身として、今読書を楽しめないほど頑張りすぎているんだな、と冷静に自分の現状を見つめなおすことができました。
内容充実度
内容の充実度は★3です。
興味深さで記載した通り、内容は面白く、私としても新たな発見がいくつもありました。
ただ、この本の内容とは逆行してしまうのですが、やはり私も現代人なので、日々の生活にどう活かしていくかという内容を求めてしまいます。
この本内では、具体的な解は記載されていなく、過去~現在までの事象の記載がメインになっているので、この評価にしています。
おわりに
自分の趣味である読書についての歴史を学び、読書について理解が深まりました。
この忙しい情報社会のなかで、どのようにすれば読書を継続して楽しめるか、自分なりに考えていこうと思います。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。